南医療生活協同組合 総合病院 南生協病院様は、名古屋市緑区に所在する中核病院として地域医療を支えています。その成り立ちは伊勢湾台風に被災した住民らの「自分たちの医療機関がほしい」という願いから、医療生活協同組合として誕生しました。地域と協同して、職員一人一人がいきいきと働くことができる病院づくりに取り組む中で、2019年に導入されたベッドサイド情報端末「ユカリアタッチ」について、同院の皆さまにお話を伺いました。
業務量増加を背景に、効率化を目的としてユカリアタッチを導入
― まずは病院長 水野様にお話を伺います。ユカリアタッチを導入された経緯や所感を教えていただけますか?
水野様:ユカリアタッチを導入した一番の理由は、医師も看護師もどんどん業務量が増えている中で、業務の効率化を図るという目的です。それぞれの部署や部門で工夫してタスクシフトを進めておりますが、現場をサポートする一つの手段としてユカリアタッチの導入を決定しました。
また、ユカリアタッチは医療安全にも寄与するシステムです。やはり取り違えや思い違いというのは忙しいときに特に起こりやすく、そのようなインシデント防止のためにユカリアタッチを有効活用することが重要だと考えています。
私自身でも、例えば患者さんの回診に伺うときにユカリアタッチで情報を確認することがあります。多くの患者さんを診ているので、すべての情報を把握しておくことはできません。患者さんの情報を確認するためにナースステーションまで行って電子カルテを見るより、必要な時に適宜ベッドサイドで確認をするほうが効率的かつ安全だということを実感しています。
看護業務の効率化と安全性を両立し、看護体制の変化にも対応
― つぎに看護部長 福島様にお話を伺います。ユカリアタッチを導入された経緯やその当時に大変だったことなど、教えていただけますか?
福島様:導入のきっかけは、2点あります。まず1点目に、看護体制が7:1から10:1に変更されたことでした。体制変更に伴い、看護業務の効率化と安全面の両方を高めることが必要だと考えていました。
2点目として、もともと南医療生活協同組合は「患者さんやご家族と一緒につくる医療」を大切にしており、当院では患者さんの情報をマグネットのピクトグラムで掲示して、患者さんとともに確認し合えるツールとして活用していました。しかし、マグネットの貼り替え作業が負担になってしまい、なかなか定着がされないという課題がありました。
以上の2点のことから、ユカリアタッチの導入の検討を開始し、2019年10月に導入に至りました。
シンプルな操作性で、混乱を極めたコロナ禍でも大活躍
2020年2月頃、たまたま新型コロナウイルス感染症の患者さんが当院に初めて入院され、院内が混乱してしまう事態が発生しました。外来や手術も一時的に中止され、院内の看護スタッフが総出で病棟の応援に行くことになりましたが、そこで役立ったのがユカリアタッチのバイタルサイン測定器連携です。使い慣れない病棟のカルテに戸惑っていたスタッフたちですが、「これはかざすだけで入力されるのね、これならできるわ」と、事なきを得ました。混乱の中でユカリアタッチが導入されていたことは本当にありがたかったと思い出されます。
患者さんとともに、より良い医療の提供を目指しています
患者さんに対しては、「患者さん向け ユカリアタッチの使い方マニュアル」を当院独自で作成しています。床頭台の中に入っていて、入院オリエンテーションの際にご説明をしています。医療従事者用の機能がメインではありますが、そもそも患者さんにとってより良い医療をいかに提供していくか、というところを追求しているシステムですので、患者さんと一緒に共有できるものであるといいなと思っています。
患者さんには退院時にアンケートもとらせていただいているのですが、「離床先表示」などは、「先生がいつ回診に来るかわからずハラハラしているので、離床先表示を活用して自分の居場所をお伝えでき、売店やシャワーなど安心していくことができた」というコメントをいただいたこともありました。
業務の効率化と医療安全には効果があると感じているので、今後は看護部のみならず多職種を巻き込んで、より一層活用していきたいと思っています。
「その場で測ってカルテ入力も完了」バイタルサイン測定器連携は平常時だけでなく急変時にも活用
― 続いて、病棟看護課長の我那覇様にお話を伺います。病棟の皆さまは普段の業務の中でどのようにユカリアタッチを活用されていますか?よく使う機能を教えてください。
我那覇様:いちばんはバイタルサイン測定器連携ですね。測定器をかざすだけで正確なデータが電子カルテに反映されるので、安心して使うことができます。患者さんが急変してしまった時や転倒してしまった時のバイタルなど、その場で測ってそのままカルテに入力がされるので、便利さを感じています。看護師がよくやってしまう、「手にメモを書く」というのも無くなりました。
なおかつそのバイタルデータがベッドサイドで確認できるのも助かります。私も患者さんのご挨拶に行ったときにご家族が来られていたりすると、「ここ最近の調子はどうですか?」と聞かれるんですよね。ただ、挨拶のときはカルテを持っているわけではないので、「ちょっと調べてきます」とナースステーションに戻って調べてもう一度お伝えしに行く、という作業が発生していました。それが、「(ユカリアタッチを)ちょっと見ますね」でお伝えできるので、導線的にもスムーズですし、患者さんやご家族をお待たせすることも無く、便利になりました。
注意事項の張り紙がなくなり、ベッドサイドの環境が綺麗になりました
その他には「アルコール禁止」や「右上肢処置禁止」など、注意事項がわかりやすく表示されているのも助かります。全員のカルテを確認できているわけではないので、偶然行った患者さんのベッドサイドでユカリアタッチを見てはっと気づいたこともあります。これまでだったら「アルコール禁止」など張り紙で掲示していましたが、禁止項目が多いので張り紙が増えてしまうんですよね。ユカリアタッチのおかげでベッドまわりもとても綺麗になりました。
ユカリアタッチを多職種で活用し、チーム医療を実践しています
― 最後に、摂食嚥下チームの皆さまにお話を伺います。日頃の業務の中でユカリアタッチをどのようにご活用いただいていますか?
管理栄養士 横山様:私たちはNST委員会の摂食嚥下チームとして、定期的に病棟のミールラウンドを行っています。ピックアップされている患者さんやご依頼を受けた患者さんのお食事の様子や感想を確認して、そこでアドバイスをするという活動をしています。
ミールラウンドに伺った際に、食事摂取のご様子と合わせてユカリアタッチの経過表を確認することがあります。今日は調子が良さそうだけど先週はどうなのかとか、ここ最近の経過と合わせて評価するようにしています。あとはとろみの量ですね。とろみがついていることは把握しているのですが、ユカリアタッチでとろみの濃度も記載されているので、カルテをひらかなくても手軽に情報収集ができる、というところが使いやすいなと感じます。
摂食嚥下障害看護認定看護師 太田様:私は地域包括ケア病棟に所属していますが、高齢者が多く入院しています。認知症の患者さんには時計やカレンダーが便利で、多くの患者さんが時計を大きく表示させて使っています。看護師としては、「採血禁止」や「アルコール禁止」などの情報は、検温や処置に入るときは目を光らせて見ています。ナースコールで呼ばれてとっさに部屋に入ったときに、例えばチームが違い十分に把握していない患者さんであった場合でも、転倒転落危険度やADLなどユカリアタッチに表示されていると参考にできるので、日常的に確認するようにしています。
言語聴覚士 鳥居様:私は患者さんのリハビリに回る前にカルテを確認するのですが、実際リハビリの介入を開始する前にバイタルの変化がないかどうか等をもう一度ユカリアタッチで確認してから開始する、というように使わせてもらっています。
― 今後もユカリアタッチを効果的にご活用いただけるよう、サポートをさせていただきます。貴重なお話をありがとうございました!
※役職はインタビュー当時